(日本語表現)
『日本国語大辞典』の見出し語(小見出し)にもなっている「かぜ の 色(いろ)」。文献での初出は「夏の池のみぎはもすごき松かげのあさるも青き風の色かな」(光経集〔1230年頃か〕)。
風に色があるものかと現代人なら考えそうなものだ。面白いのは、辞書に載るその意味である。『日本国語大辞典 第二版』(小学館)によれば「風の色」とは「草木などを吹き動かす風のさま。風の動き。また、その趣」である。つまり草木などに見える風の「動き」を色として感じるわけだ。
「風の色」という句そのままの使用もあれば、「緑風」や「風青し」のように色名で風を形容することもある。辞典の記述は味気ないが、『空の名前』(写真・文 高橋健司)では次のように紹介されている。
「草木の靡(なび)きなどで風の動きが感じられるのをいいます。また、青葉の上を吹き渡っていく爽やかな風は緑風(りょくふう)。秋の野山に吹く、吹く様子は見えないけれども、確かに秋の韻(ひび)きを持つ風を色なき風(いろなきかぜ)といいます。 漢詩では、春に青、夏に朱、秋に白、冬に玄の色を配していて、この考えは古くから日本にも伝わっていました。 石山の石より白し秋の風(芭蕉)」(『空の名前』「風の色」の項 147頁)