森田真生

(絵本『たくさんのふしぎ ありになった数学者』5頁)

在野の数学者、森田真生(もりた まさお 1985- )が、福音館書店の「月刊 たくさんのふしぎ」シリーズ(対象:小学3年生〜)の一冊として著した絵本『ありになった数学者』からの一節。物語の冒頭でアリになった数学者の「ぼく」がほかのアリたちに会う前に、自分が研究している「数」や「図形」の学問を説明しているくだりである。

「図形も、ほんとうはどこにもない。たとえば、直線は「幅のない長さ」のことだけれど、定規をつかって描いた線は、鉛筆の芯のぶんだけ幅があるから、ほんとうの直線ではない」

「数学者は、存在しないものについて研究しているのだ」(上掲書5頁)。

面白いのは、森田がこのような「数」や「図形」への興味を、「存在しないもの」という共通項によって、「友だちの笑顔を見たらうれしくなるし、おちこんでいる人を見たら悲しくなる。この人はいまうれしいとか、この子はいま悲しいとか、そういうことがわかる」ことと結びつけていることだ。

つまり「喜びや悲しみ『そのもの』はどこにあるのか」と問い、

「脳みそのなかだろうか? いやいや、脳はただの細胞のあつまりだから、そのどこにも『喜びそのもの』はない。3そのものがないのとおなじように、うれしいそのものも、悲しいそのものもない。それでもぼくらは、家族や友だちや、好きな人の心をありありと感じることができる」。同じように、数学者が数や図形に「じっと関心をあつめていると、数や図形の心がすこしずつわかるようになってくる」のだという(同7頁)。

文献:『ありになった数学者』 (たくさんのふしぎ傑作集) 単行本 – 2018/10/3(クリックでAmazonに移ります)※月刊「たくさんのふしぎ」シリーズとして2017年9月に配本後、2018年10月に単行本化されている