村上春樹のレイモンド・カーヴァー評

(『村上春樹 雑文集』文庫版333頁)

村上春樹自身が作品の翻訳もしているアメリカの作家レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の文学と人物を紹介をした文章からの引用である。レイモンド・カーヴァーのことはさておき、村上の評価の仕方、その視点が面白いと思う。同じ紹介文には、ほかに次のようにも書かれている。

「制度的言語や、余分な装飾的形容を全部取り去って、そのあとにどれだけ自分の魂を『物語』というかたちで正直に、そして温かく吐露できるか、それが彼の目指した文学的地点だった」(上掲書333頁)。

「もちろんカーヴァーは天才的な作家ではあるけれど、彼にはいかにも天才肌というところはなかった。『俺は好きに書いているんだ。わかる人にだけわかればいいんだ』というような上から見おろす姿勢は彼のとるところではなかった。彼は一人でも多くの人に語りかけるために、あるいは自分自身に向かってより深く話しかけるために、平明で簡潔で日常的な言葉だけを用いて小説を書き、また詩を書いた。それが作家としての彼がとった、首尾一貫した態度だった」(同332頁)。

文献:『村上春樹 雑文集』 (新潮文庫) – 2015/10/28(クリックでAmazonに移ります)