向田邦子
(『向田邦子 暮しの愉しみ』所収「眼があう」41頁)
骨董の器好きの向田邦子が自分の器選びの仕方を語ったくだりである。物を見るのに「目利き」とはよく言うが、目を利かせる前に「なるべくぼんやりとあたりを見廻す」というのは面白い。
向田邦子(1929-1981)は脚本家、小説家(直木賞受賞)。料理上手で知られ、好きなお酒に合う気の利いたアテを、自分で選んだ骨董の皿に盛り付けて愉しむ姿がエッセイなどによく見える。上掲の言葉はこう続く。
「眼があったとき、『あ、いいな』と思い、この皿にのせてうつりのいい料理が眼に浮かぶものだと、少し無理をしてでも財布をはたいた。料理といったところで、茄子のしぎ焼とか、風呂吹き大根とか、貝割れ菜のお浸しとかのお惣菜だが」(上掲書42頁)。
「ものは値段など知らないほうがいい……詠み人知らず、値段知らず、ただ自分が好きかどうか、それが身のまわりにあることで、毎日がたのしいかどうか、本当はそれでいいのだ」(同43頁)。