片渕須直さん

(NHK「戦争をどう伝えていくか」2025年8月10日放送より)

片渕須直さん(かたぶち すなお 1960- 大阪生まれ)は日本のアニメーション監督、脚本家、日本大学芸術学部特任教授。

上掲の言葉は、終戦から80年目の今年、NHKがこれまで制作した数多くの戦争番組を振り返り、戦争の伝え方をテーマにした番組の中で口にされたものである。大阪万博(1970年)で始まった1970年代、日本は経済大国になり、世界では核兵器の数が益々増加する状況の中で、1975年、被爆者が描いた原爆の惨状をもとにしたドキュメンタリー番組「市民の手で原爆の絵を」が大きな反響を呼んだ。そして同局には原爆の惨状を伝える2200枚の絵が集まり、全国各地でその展示会が開催され、合わせて22万人以上が訪れたという。片渕さんもその絵をたくさん見たことがあって、「あれだけの数(の絵)が揃ってみると、何が起こったのかが、かなりはっきりとわかってきてしまう。人間の尊厳が全部吹き飛ばされ、奪い取られ、剥ぎ取られてしまった姿ばっかりで…。たとえば映画とかそういうもので、表しえないくらい残酷なもの、生々しいものだったりするわけです。ここに何かが起こった、こんなようなことが起こったのはまちがいない、と信じざるを得ない、そんな気持ちを抱きました」※と言う。上掲の言葉はこれに続く発言の一部である。

「『戦後』ということばは、敗戦による凋落(ちょうらく)からの復活を表すということもあるかもしれないけれども、戦争が何を残したのか——傷痕(きずあと)ということばもありましたが——その残したものが続いているかぎり、誰かの中にはまだ『戦後』が残っているということなのだろうと思います。」※

※音声に拠ったため、キャプション通りではありません。