カール・ヒルティの親友の一人
(ヒルティ『眠られぬ夜のために 第一部』39頁)
カール・ヒルティ(1833-1909)は、スイスの下院議員を務めた法学者で、宗教的倫理的な著作でよく知られた文筆家でもあり、『眠られぬ夜のために』は日本でも岩波文庫の一冊として長く読まれてきた。「眠られぬ夜のための思想」としてまとめられた同書の一節で、彼の親友の言葉として紹介されるのが上の言葉である。一種の処世術であるが、ヒルティは次のように解説する。
「このいささか風変わりな言葉は、さまざまな社会的地位にあって、成功を収め人に抜きんでた私の親友の一人が、いつも口にしていた文句であった。実際、きわめて多くの面倒で不愉快な人生のいざこざも、しばしばこのやり方で、たやすくきり抜けることができる。これに反して、多くの人が愛好する、いわゆる『自分の意見発表』は、たいてい、ただ双方の意見のくいちがいを一層きわだたせるだけで、時には事態を収拾のつかないものにしてしまうことがある。『よく考えておきましょう』という言葉も、ひどく激しやすい人や、気心や決心が変わりやすい人に対しては、しばしば奇跡的な効果がある」(同39頁)
文献:『眠られぬ夜のために 第一部』 (岩波文庫 青 638-1) – 1973/5/16(クリックでAmazonに移ります)